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医療介護職に向いている⁉︎社会課題を解決する「ソーシャルビジネス」とは

医療介護職,ソーシャルビジネスとは

社会貢献=仕事という認識の強い高まりを感じる昨今。

今回は、社会貢献を軸に、今までの資本主義主体では解決が困難であり、取り残されてきた社会課題に着目した事業「ソーシャルビジネス」について最近の動向を踏まえて解説しています。医療介護福祉職と非常に相性の良いビジネスです。

ソーシャルビジネスとは?

社会課題を解決することを目的に行う事業を「ソーシャルビジネス」といいます。NPO法人や一般社団法人などが主体になっていることが多いです。

今までの資本主義のメカニズムでは、多くの人にリーチすることや、事業の拡大を目指すことが基本的な戦略でした。

しかし、そういった方向性で多くの企業が走り始めると、社会的に取り残されてしまう人たちがいます。

具体的には、貧困層、収入の少ない高齢者、母子家庭や父子家庭、学習の機会を得られない子供などの具体的な支援が必要な状況の人です。

資本主義では、貧困層を対象とした事業をしても収益化は難しい側面があります。そういった社会的に立場が弱くなってしまう方々を支援するために、元々、国による社会保険福祉制度が成立しました。

しかし、今はみなさんご存知の通り、社会保険福祉制度で支援できる範囲も限られてきており、それ以外の方法で社会課題を解決しようという試みが盛んになってきています。その中で代表的なものの1つが「ソーシャルビジネス」です。

少子高齢化が進んでいることを背景として、高齢者支援、障がい者支援、子育て支援などの事業活動が益々盛んになってきているのです。

筆者はtwitterFacebookなどのSNSをやっていますが、自身が理学療法士であるため、医療職の方との繋がりが多く、タイムラインに流れてくる話題も地域貢献や高齢者、子供、産後女性の支援など、ソーシャルビジネスの範囲に当てはまるものが大変多いです。特に最近は本当に顕著だと感じます。

まだまだNPOなどを設立して事業として本格的に行なっているケースは少ないですが、身内の仲間を集めて、数人のチームで社会課題を解決することを目的とするイベントや催しの告知がタイムラインによく流れてきます。

ソーシャルビジネスの融資額の推移

日本政策金融公庫の融資実績の推移。4年でおよそ倍の急成長。

ソーシャルビジネスの社会性と事業性のバランス

ソーシャルビジネスの目的は経済的な利益ではありません。社会問題の解決です。しかし、事業を継続していくために、必ずある程度の収益を確保していく必要があり、社会性と事業性、一見相反するものの共存が課題になります。

1つ具体的に例を挙げて考えてみましょう。

ソーシャルビジネスの例「ビッグイシュー」

みなさんは、街中など人が多い場所で、ホームレスの方が雑誌を掲げて販売している姿を見たことはありませんか?売っている雑誌は「ビッグイシュー」です。

有限会社ビッグイシュー日本の事業は、ホームレスの方をビジネスパートナーとして雑誌「ビッグイシュー」を販売して貰い、その売り上げの半分以上(350円のうち160円)が販売者の収入になる仕組みです。イギリスからスタートし、2003年から日本でも始まりました。

初めの10冊は無料で配布し、その売り上げの3000円を元にして仕入れを行います。100冊販売すれば1万6千円。仕入れて売ってを繰り返せば、自立のための資金とすることができます。

しかし、もちろん、仕組みがあれば自立できるのかというと、そう簡単にはいきません。ビッグイシューを販売して自立していく人は1割未満だそうです。

人がホームレスになるのはなぜだと思いますか?

ホームレスの方々とビジネスを通して密にコミュニケーションを取り、そこを突き詰めて聞き、考えていくことこそがこの事業が成功する秘訣だと思います。

事業発足時の資金集めはどうしたのか?

雑誌を創刊するのに、5000万円~6000万円必要です。

ビッグイシューが初めに用意できたのは2000万円。

内訳は、当時の国民生活金融公庫(現在の日本政策金融公庫)の開業融資と、大阪府人権金融公社からの融資で合計1,200万円。創業メンバーが出したお金が300万円。コミュニティビジネスプランコンペで100万円。残りの400万円は1口5万円の「市民パトロン」を募集して集めたそうです。

こういった事業は資金を集めるのも大変なようです。

ソーシャルビジネスを行なっている事業に関して、日本政策公庫からの借入以外では、自社の役員や民間金融機関から借入していると回答した割合が全体の約5割、NPOでは、全体と比較して、助成金や補助金、寄付金、会費を得ている割合が高くなっています。

 

しかし、現在では、資金を集める方法も多様化し始めています。

クラウドファンディングの普及や、UBER(ウーバー)やAirbnb(エアビーアンドビー)などのシェアリングエコノミーは資源を有効活用するソーシャルビジネスと非常に相性がよく、インターネットの新しいテクノロジーの進化によってどんどんその可能性は拓かれています。

社会課題の解決志向は世界的にも高まっており、2013年に海外大手金融機関のゴールドマン・サックスによるSocial Impact Fund(ソーシャルインパクトファンド)が設立され、「ソーシャル・インパクト」という富裕層向けの社会貢献型金融商品が拡充され始めています。

ソーシャル・インパクトとは、投資収益だけでなく社会的なインパクトの創出も目的とする投融資行動に対応する商品のことです。ソーシャル・インベストメント(社会的投資)と呼ばれたりもします。

少子高齢化、格差拡大、政府の財政悪化という状況のなか、民間の資金を使った社会課題解決の新たな処方箋として期待されています。

その他の主なソーシャルビジネス

  • 貧困層への無担保小口融資(マイクロファイナンス)「グラミン銀行(2018年日本にも進出予定)」
  • 女性の産後ケア「マドレボニータ
  • 子育て支援「フローレンス」(筆者は代表の駒崎弘樹氏をtwitterでフォローしています。)

最近では、

などがあります。

それぞれどんな事業をしているのか、詳しく知りたい方はリンクをクリックしてみて下さい。一般企業とちょっと違った視点のビジネスばかりで面白いですよ。

今までとは違った収益の仕組みが必要

医療介護職,ソーシャルビジネスとは

筆者は個人的にソーシャルビジネスに興味があり、色々と調べたりしていますが、社会性が高い事業ほど収益を直接対象者から頂くことは難しいのが現状のようです。

考えてみれば当然で、貧困で困っている人を助けるサービスをしていて、直接困っている人からお金を頂くわけにはいきませんよね。

そういったところで、クラウドファンディングや投資、協賛を募ったり、違った視点で収益を補う必要があるのでしょう。

また、社会保障制度の疲弊が著明な昨今、その一部を代替えするシステムとして政府も期待しており、助成金なども充実し始めています。

※参考:日本政策金融公庫HP

資本主義経済も現在は世界的に経済成長率が鈍化しており、新しい資本の流れが生まれ始めています。

 

次回は、私たちでも比較的簡単に始められる「スモールビジネス」について解説していきたいと思います。これも医療介護職に非常に相性の良いビジネスモデルです。

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生き方専門家 西野 英行
ポジティブ心理学実践インストラクター/理学療法士/ブロガー。本業をしながら、個人で多方面に活動する「セミフリーランス」という新しい働き方を実践中。著書「100歳まで元気でいるための歩き方&杖の使い方」

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