INTERVIEW
インタビュー
【ボスの複業】複業から始まる!農業✖️福祉のまちづくり 〜障害が強みに変わる人材マネジメント
目次
わたしの複業は「野菜の種とり」です(笑)写真の笑顔からその人柄がにじみ出る「農家のせがれボス」の杉田さん。
今回は、滋賀県栗東市で農業✖️福祉「農福連携」事業を営むNPO法人「縁活(えんかつ)」代表の杉田健一さんにインタビューさせていただきました。
・インタビューを受けた方
インタビューを受けた方
NPO法人縁活(えんかつ)代表
一般社団法人自然栽培パーティ 副理事長
杉田 健一(すぎた・けんいち)さん
(プロフィール)
趣味:野菜の種取り
滋賀県栗東市出身の197●年生まれ。障害者グループホームで長年働く中で、もっと一人一人が自分らしく生きることを応援できる場所をつくりたい」という思いから、2009年に特定非営利法人縁活を仲間と立ち上げる。2013年に無農薬・無肥料で野菜づくりを行う「自然栽培」に出会い、事業所の仲間と一緒に取り組み始める。実家がイチジク農家ということもあり、農業✖️福祉の「農福連携」モデル事業として、障害のある人の強みを生かして働ける無農薬・無肥料の自然栽培を行う「おもや農園」やオシャレな農園カフェ「オモヤ★キッチン」を運営するなど、農福連携のまちづくりを行なっている。
栗東市で大人気の農家カフェ「オモヤキッチン」
青いドアに明るい店内。カウンター前のショーケースには、美味しそうなケーキが並ぶ。
農園で採れた季節ごとの新鮮な野菜・果実をつかった健康で美味しい料理が、地元の人たちに大人気のオシャレなカフェ「オモヤ⭐️キッチン」!
小さなお子さんから、おじいちゃんおばあちゃんまで、
美味しいご飯を食べながらゆっくり会話を楽しめる場所として地元で大人気!
このカフェを運営しているのが、障害のある人が地域で安心して生活や仕事ができるように、グループホームや農園を営んでいる、NPO法人縁活です。
▼オモヤキッチンの大人気スイーツ&自然栽培野菜を使った健康食品
こういった事業を展開するきかっけとなったのが、実家がイチジク農家の「杉田健一さん」の複業。
いったいどのようにしてこの取り組みが地域で広がってきたのか?
「複業」から生まれた農業✖️福祉のアイデア
農家の長男として生まれた杉田さん。
「複業」として手伝っていたイチジク農家の農作業をする中で、地元の農家の人出不足の課題を実感することになる。
“日本で農業をする人は毎年減少していて、約60%以上が65歳以上という超高齢化産業で人出不足が課題となっている。”
▼日本の農業人口は約50年で約1200万人減少
(出典:農林水産省「農林業センサス累年統計 -農業編- (昭和35年~平成22年) 」「農業労働力に関する統計」)
一方、福祉業界では、ハローワークを通じた障害者の就職件数、求人件数は毎年右肩上がりで増加して、平成30年度のハローワークの職業紹介状況によると障害者の就職件数は年間約10万人で、毎年右肩上がりに増加していて、障害のある人の仕事の場は広がってきている。
農業の経験と福祉の経験。
2つの経験をヒントに、「縁活」では、障害のある人が、自分らしく活躍できる新たな場として、「農業」が良いと考え2011年に「おもや農園」をスタートしました。
障害が強みに変わる自然栽培と人材マネジメント
自然栽培と出会い、「障害が強みになる農作業」があることに気づいた杉田さん。
農薬を使わずに自然の力を引き出しながら栽培する自然栽培は、大変手間がかかる農法ですが、喜ぶ人の顔を想像しながら、じっくり丁寧に野菜づくりに取り組める自然栽培は、障害者の就労支援事業と相性はとても良いです。
例えば、
自閉症の人は草刈りがとてもきれいにできたり、
視覚障害のある人がとても丁寧に種まきができたり、
農作業をみんなで協力して進める過程で、障害をもった人のそれぞれの強みを「発見」しながら、無農薬・無肥料の付加価値の高い自然栽培の野菜づくりや販売を行い、
地域を巻き込みながら事業が広がっていく。
自然栽培では全ての生き物を受け止め、土の中でどう作物が育つかを考えるのですが、これは経営においても同じ発想です。
社会も土と同じで、多様性を認めるところから始まります。
「野菜」も「人」も、自然の力を引き出す方が、本来もっている強みが活かされる。
その環境づくりをするのがマネジメントの役割と言えます。
ボスから見た複業のメリット!福祉の「引き出し」を増やす
「縁活」とうい法人名には、地域の方々の「縁」に「活」かされているという意味合いがあります。
福祉の仕事は、「人と寄り添う」仕事ですが、「複業」をすることで、そのために必要な自分の引き出しを増やすことできます。
また、スタッフにとっても、社内複業スタイルで、作業所だけでなく、農園、カフェ、近隣農家さんのお手伝い、野菜の直販イベントなど、いろんなところで働く機会をもつことで、地域の方々とつながり、まちづくりにつながっていきます。
福祉✖️農園、福祉✖️カフェ、福祉✖️地域イベントなどなど、掛け合わせることで新しい価値を生み出します。
私は、実家のイチジク農家の複業と福祉事業所を掛け合わせることで、「農福連携」事業を展開することになりました。
色んな仕事を体験することで、福祉の引き出しをどんどん増やしていって欲しいです。
複業で大事にしていること
Q杉田さんが複業する時に大事にしていることはありますか?
A(杉田さん)地域活動も含めて、5つほど複業をやっていますが、意識していることが大きく3つあります。
1つ目は、日頃つながってない人や場所とつながること。
福祉業界は、専門職が集まるためどうしても視野が狭くなりがちです。
仕事をする中で、どう豊かに生きていけるか?が大事なので、色んな人との出会いから、知識を得ることでより豊かな発想を持つことができます。
福祉事業所を運営していく中で、わたしの実家が兼業農家で本当に良かったと思います。
2つ目は、得た情報をまわりにアウトプットすること。
一つ一つの出会いをどうつなげていくか?そこで得た情報をどうやって周りにアウトプットするか?
ただ、「良い体験ができた」で終わるのは勿体無いので、出会いを価値に変えるためにも、
得た知識をまわりに共有する機会をもつと、よりよい複業になると思います。
3つ目は、自分の心がやりがいを感じること。
何か得するからやるという打算的な考え方ではなく、自分の心が本当にやりたい!と、頭で考える前に心が反応して動くような複業に出会うのが理想ですね。
そんな複業に出会えると、予想もしてない相乗効果が生まれることもあります。
他人から認めてもらいたいからではなく、自分の心を大事に取り組んでもらえればと思います。
まとめ
「複業」は、副業、趣味、地域ボランティアなどの活動、または育児や親の介護など、家族を大切にすることなど広い意味があります。
ボス(経営者や上司)が複業することで、仕事での経験・スキルを社外で活かすと同時に、社外での経験を仕事に活かすことができ、職場でも好循環が生まれ、人間的な余裕や優しさが職場スタッフの信頼にもつながっていきます。
多くの企業経営が、単に儲ければよいという考え方から、ビジネスを通して社会にどんな価値を提供するか?という本質へシフトしていくこれからの時代。
複業を通して、社外活動をポジティブに捉えることで、さらに企業の成長につながっていく。
「複業」を推進する企業が今後ますます増えていくことでしょう。
◆NPO法人縁活の活動について
2009年 「グループホーム、ケアホームすうほ」スタート
2011年 就労継続支援B型事業所「おもや」スタート
2012年 「グループホーム たちきの実」スタート
2013年 自然栽培で農業開始 自然栽培パーティ参加
2015年 農家カフェ「オモヤキッチン」スタート
市内の耕作放棄地で米作開始
2017年 「滋賀県で働く障害者を応援する農福連携モデル事業所認定制度」の認定取得
2019年 龍谷大学福祉フォーラム第17回共生塾「農福連携で人をつなぐ、地域をむすぶ」講演
◆NPO法人 縁活 就労継続支援 B 型事業所 おもや
住 所:栗東市霊仙寺 1-3-24 TEL:077-598-5368、FAX:077-598-5367
E-MAIL:omoya@aria.ocn.ne.jp
HP:www.facebook.com/agriculture.omoya
◆一般社団法人 農福連携自然栽培パーティ全国協議会
インタビュアー ワーシャル協働代表 中西 信雄
インタビュアープロフィール
元上場企業のキャリアコンサルタントとして、一般職種から医療系人材まで、約10年間キャリア相談及び、法人採用サポートに従事。これまでに約300法人への採用支援と約4000名のお仕事の相談に関わる。2013年に社団法人ワーシャル設立し、「①個人②企業③社会が3方良し」の「社会的複業」という働き方の情報発信を行う「働き方WEBマガジン」を運営しながら、「ジブンゴトで働くを面白くする!」をコンセプトに病院、薬局等の人事を複数掛け持ちしながら、キャリア講師、農園アドバイザーとしても活動するなど、20枚以上の名刺を持つパラレルキャリアを実践中。